ドラマ昭和元禄落語心中第一話根多解説

いよいよ12日、ドラマ「昭和元禄落語心中」がスタートしましたね!原作のマンガ派、石田彰や山寺宏一が演じたアニメ派など、多くのファンがいる今作の評判はなかなか上々で、というかみんな第二話の過去編からが本編という気持ちなので、一話は少々ダイジェスティブでしたね。今回は、その再放送を前に、第一話で話されている根多の説明をすこししてみようと思います。

品川心中

冒頭で岡田将生演じる八雲が語る「心中の話」で語られているのは「品川心中」。原作漫画にはなかった描写なのでドラマのために付け加えられたもの。

「品川心中」は全盛期を過ぎた芸者が最後に名前を残そうと野暮なお客に心中を持ちかけるが…というもの。こうしてみると八雲が最期に与太郎を弟子にとるという話の大まかな枠組みがこの話を辿っている事がわかる。「品川心中」の心中は落語なので失敗してしまうのだが、この話での心中は果たして成功するのか失敗するのか…

死神

八雲が刑務所の慰問で演じたのが「死神」死神という不気味な老人から人の寿命を判断し、死神を追い払う呪文を教えてもらった男が最初医者として成功するが…という話で、後半ぐっとダークになり、男は因果応報の報いを受けるという刑務所でかけるには本当に意地悪な根多ですね。この話の肝の一つに人の命を奪って寿命を「繋ぐ」というのがあり、これがまさに八雲の自身が思っている生き様と重ねられている。サゲは人によって演じ方が様々あるが、一番有名なものは三遊亭圓生のもの。おそらく八雲もそれを下敷きにしているのであろうが、あのサゲは最期緞帳が降りてこないといけないので緞帳のない刑務所ではどのような演じ方をしたのであろうか…?

野ざらし

回想の中で助六が演じるのは「野ざらし」上方では「骨つり」で知られる話で、女の骨を釣った男が美人の幽霊から感謝された話をきいて同じことをしようとして(もうこの時点でかなりおかしい)失敗する間抜けな男の話。演じる人によって怪談ものとしても滑稽ものとしても演じることのできる非常に間口の広い根多で、八雲本人は怪談味を強く、助六は滑稽に演じている。

女が落語

77年当時、東京では81年に三遊亭歌る多が入門する前なのでおそらく女流落語家はまだ存在していない。上方落語における女流落語家は74年に露の五郎に入門した露の都氏がいたが77年だとおそらく年季明けしてはいない。実のところ女性落語家志望者はそれ以前にもいたが、みんな途中でやめたり師匠の妾になったりしてやめてしまったらしい。

落語の演じ方

死神の演じ方を八雲のようにやってもうまくいかないと指摘され、「自分勝手に演じていい」と言われる与太郎。

落語の演じ方、というのはいわゆる俳優の演じ方とほとんど真逆のようなところがある。いわゆる優れた俳優の演技はその当人の素が持っていないものを演じると評価されている(例えばゲイでない俳優がゲイを演じる、等)むしろ落語家の演じ方は自分の中にある経験や素の部分をどうやって引き出すか、という演じ方をする。年をとればとるほど自身の芸の幅が広がると言われているのはそういう所以ですね。

たちきれ

与太郎が部屋で盗み聞きをしているのが「たちきれ」

原作では後半で演じられるこの根多を前半に持ってきてます。本来は上方の話を東京の八雲が演じているのは、おそらく萬歳師匠に教わったという縁があったのだろう。芸者に入れあげた若旦那を反省させるために蔵へ軟禁するが、その間に芸者は…という上方では数少ない人情噺。

ただ、77年当時で「雪」をちゃんと弾いてくれる東京のお囃子さんはそんなにいなかったはず(「黒髪」で代用されることが多かったそうです)大抵の「たちきれ」は咳ごみを合図に三味線が入るという合図になってるのでちょっとドラマだと三味線のタイミングが早いですね

落語の名跡

この話は「八雲」(実はもう一つ「助六」もある)という名跡を誰が継ぐべきだったか、というのが一つのテーマになっているが、名跡は落語における最大の遺産といってもいいものなので、誰が継ぐか、継ぐべきか、というのは様々なエピソードがある。あまりに大きな名前のために当代の芸が霞んでしまったり、本人がプレッシャーでつぶれてしまったりということもある。

父の芸

助六の芸を絶やしたくない、という小夏。しかし実際のところ、大名跡と同じように名人の息子は偉大な父親という影から逃れるために違う芸風を志向する事が多い。「父の芸に興味がない」といった萬月がそうですね。古今亭志ん生の息子である志ん朝、二代目春団治の息子である三代目春団治の芸なんかはとても顕著。

寿限無

落語を知らない人でも知ってる話といえば「寿限無」と「時そば(時うどん)」実際に前座がかけることの多い根多を前座になった与太郎が演じている(これも原作にはない)。「名前をもらって高座に上がった」ということを下敷きにしているのだろう。

出来心

与太郎がヤクザの兄貴分を納得するために演じたのがこの根多。泥棒の親分とその舎弟の関係性がそのまま与太郎と兄貴の関係につながっている。原作では前座だと短く切り上げるべきところをそのまま伸ばして最期まで演ってしまう、という描写があった。短く切り上げる場合は「裏は花色木綿」で終わる。ドラマ「タイガー&ドラゴン」で長瀬演じる小虎が演じていたのは短い方。

たらちね

与太郎が独演会の前座でかけるのが「たらちね」上方では「延陽伯」の題で知られる。

これも寿限無と並んで前座でよくかけられる根多で、この2つは言葉の掛け合いそれ自体に面白みがあるからだろう。

鰍沢

長い根多で前半の寒い情景は冬に演じるにはもってこいの話。後半はスペクタクルもあり、演者の腕が試される話。

あと、八雲を撮る映像の画角を昭和の名人の落語動画の画角に完全に合わせてますね(笑)助六のレコードのデザインやこういうところにスタッフの落語愛を感じて非常に嬉しくなります。

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